享年７３歳。合掌。君たち若い人が頑張らないと・・・ 大弦小弦 八葉蓮華

　「ずうたいが大きい分、風当たりが強いんだよ」。強面（こわもて）に見えたが、ウイットに富んだ会話で周囲を和ますことを忘れなかった元副知事の比嘉茂政さんが逝った

　稲嶺前県政では、経済界出身の知事と政界の橋渡し役を担い、米軍基地問題で中北部の首長たちとひざ詰めで意見を交わし、批判の矢面に立つこともたびたびだった

　琉球政府を皮切りに行政畑を歩んだが、３期半務めた恩納村長時代にキャンプ・ハンセンの都市型訓練施設建設計画に「これ以上の被害はごめんだ」と真っ向反発する

　資材搬入の車両を阻止する住民行動の最前列に陣取った。その後、当時の副大統領に計画断念を発表させた。根底にあった「過重な負担」と闘う政治姿勢は県政に戻っても変わらなかった

　若い人への温かなまなざしも印象深い。ゴルフの宮里藍さんがアマチュアで国内優勝した際、「県民栄誉賞授与ですね」とのこちらの問いに、「彼女は世界で活躍する逸材。そんなものはいつでもできる」と一蹴（いっしゅう）された

　退任後も気掛かりは尽きなかったのだろう。金武町の米軍都市型施設を臨む場所に足を運んでいたという。「君たち若い人が頑張らないと。落ち着いたら一杯やろうか」。今夏にいただいた電話が最後になった。後輩を思う心配りは病床でも健在だった。享年７３歳。合掌。（石川達也）

　大弦小弦　沖縄タイムス 2010年10月30日　
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