SSブログ

「河童(かっぱ)」お前はこの世界へ生まれて来るかどうか・・・ 大弦小弦 八葉蓮華 [大弦小弦]

 芥川龍之介の「河童(かっぱ)」で、お産の場面があり、河童の父親がお腹(なか)の中の子に次のように尋ねる

 「お前はこの世界へ生まれて来るかどうか、よく考えた上で返事をしろ」。河童の世界は出産に際し、胎児の意思が尊重されるらしい。半世紀以上も前の物語は、現代社会の歪(ゆが)みを予言していたのかもしれない

 交際していた妊娠中の女性に子宮収縮剤を投薬して流産させたとして、男性医師(36)が不同意堕胎(だたい)罪で警視庁に逮捕されたとのニュースに耳を疑った。河童と違い、人の世は生まれてくる子の意思など関係ないということなのか

 母体保護法により一定の条件下での人工中絶は認められている。だが、その裏で安易な中絶があるとの指摘も消えず、わが子の同意を優先する河童の目に、人間社会の実情はどう映るのだろうか

 報道によると、男性医師は「女性が妊娠していたことは知っていたが、流産したことは知らなかった」と容疑を否認。男性は既婚者だったが、女性は「子供は産むつもりだった。(男を)信じていた」と話しているという

 真相は捜査の進展を待たなければならないが、逮捕された医師に一つだけ尋ねたい。複雑な事情はあったにせよ、まだ見ぬ子はこの世に生まれ、あなたに会いたかったのではないですか。そうは思いませんか、父よ。(稲嶺幸弘)

 大弦小弦 沖縄タイムス 2010年5月20日 
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。