市場収縮、日本経済も混迷を深めている・・・ 大弦小弦 八葉蓮華

　角界のヒール（悪役）の異名を持つ朝青龍が場所前の予想を覆して初場所を制した。白鵬との優勝決定戦で見せた圧倒的存在感は、多くの人をくぎ付けにした

　しかし、その立ち居振る舞いや強さへの評価は二分する。漫画家のさだやす圭さんが「あれだけ強い性格じゃないと」と肯定すれば、やくみつるさんは「強さだけでなく、以前の傍若無人に振る舞う朝青龍に戻りかねない」と言う

　「朝青龍が帰ってきました」との本人の弁は強さの意味か、はたまたヒールとしての存在も含めての意味なのか。嫌われることを意に介さないような態度もまた「好き嫌い」が分かれる理由だろう

　昨年来続く世界的な不況の嵐。震源地となった米国では、けた外れの報酬を手にしていた金融機関の幹部や経営支援要請の場に専用ジェット機で乗り付けた自動車大手の幹部らが、ヒールの役を演じた

　二期八年の任期を、結果的に国際政治・経済の混乱を招いて終えたブッシュ前大統領は、ある意味で世界で最も有名なヒール役を担ったまま政治の表舞台を去っていった

　日本経済も混迷を深めている。市場収縮に対する企業の雇用調整が大量の離職者を出し社会問題となっている。そこにヒール役を見いだすより打開に知恵を絞るべきだと思うのだが、政治の存在感はなお薄い。（久高将己）

大弦小弦　沖縄タイムス 2009年1月27日　
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