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酒を飲めば会社の愚痴が口をつく世慣れた先輩たちの目に・・・ 大弦小弦 八葉蓮華 [大弦小弦]

 詩人の中桐雅夫さんに「会社員」と題した作品がある。サラリーマンの悲哀をこんな風に描く

 〈きみの会社のきみの引き出しの隅を/クリップを伸ばした先でつついてごらん/お世辞の雨でふやけた塵(ちり)や/皮肉のにかわで固まった塵が出てくるよ…〉(詩集「会社の人事」晶文社より)

 嫌な相手にお世辞を言い、喉元まで出かかった皮肉の言葉をぐっと飲み込む。30年前の作品だが、会社員の世界は不変なのかもしれない。引き出しの隅に積もった塵の山に苦笑する方もいるはずだ

 今春、社会人になった新入社員たちに、そんな「塵」は無縁だろう。入社から2カ月が過ぎ、ようやく慣れたころだろうか。テキパキと仕事をこなす隣の先輩が頼もしく見え、上司の言葉一つに緊張する毎日かもしれない

 いずれ、仕事で失敗をして上司にどやされ、苦い酒に涙をこぼす日も来るだろう。でも年を重ねて、引き出しの隅に憂いの塵を積もらせるようになれば、遠いその日を懐かしく思える時がきっとくる

 先の詩集と同じ題名の「会社の人事」という作品に、ほろ苦い一節がある。〈子供のころには見る夢があったのに/会社にはいるまでは小さい理想もあったのに〉。酒を飲めば会社の愚痴が口をつく世慣れた先輩たちの目に、戸惑う新人の君の姿はまぶしく映る。(稲嶺幸弘)

 大弦小弦 沖縄タイムス 2010年6月10日 
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